仕事人としての東京ガスラグビー部 / works

第5回:樋野 和男 前篇

環境が当時と全然違うから、僕なんかエラそうなこと言えない。
今の環境でラグビーと仕事を両立している選手を尊敬しています。
どちらにも真剣に取り組む中で、彼らに悩む時期があるのもよく理解できます。


創部者・前部長としてご活躍された樋野和男さんにお話を伺いました。

まずは、現在のお仕事について、教えてください。

磯子にある、日本超低温株式会社の代表をしています。
同社は、液化天然ガス(LNG)の冷熱を利用した超低温冷蔵倉庫のパイオニアとして、首都圏の超低温コールドチェーン物流拠点となり、超低温冷蔵庫としては日本最大級の庫数を保有しています。

現在へ至るまで、入社直後の配属と、ラグビー部創設の経緯を教えてください。

はじめの配属は千葉支社。経理をやっていました。当時は“広域支社”という言い方をしていたんですが、千葉は山梨、群馬、茨城等と同じ位置づけでひとつの独立体として動いていました。規模が比較的大きかったため勉強になりましたね。この千葉にいた頃にラグビー部を作ろうと思い立ち、内輪から募集かけました。そこへ細田さん(OB)らが応募をしてきてくれたんです。そのころはまだ会社が完全土日休みではなかったから、毎週日曜日に深川に集まって練習していました。8人も集まれば大喜び。(笑)だいたいいつも5人くらいでの練習が普通でした。

その後、当時日本橋にあった本社の経理部へ異動になります。現在はみずほ銀行のある場所です。この時は部の仲間と皇居を走ったりしていましたね。ここで1年程度働き、労働組合へ出ます。僕にとっての選手生活は、いったんここで区切りとなります。

異動が多い20代ですね。

そうなんです。実は僕は16年で8回異動しています。
このあとは、横浜(販売係。当時の販売店、今のライフバルの販売促進)へいき、再び労働組合(部長職として)→川崎→新宿プロジェクト→資材部→ガスター(株)、日本超低温(株)代表取締役というキャリアをたどります。

一旦、選手として部を離れたのち、精神的に改めて部に近づいた時期があれば教えてください。

川崎に戻った頃(昭和60年、当時35歳くらい)ですね。
この時に、今に続く、大阪ガスとの対抗戦をする機会を得たのです。当時のレベルからして、ちょっと苦しい試合になるだろうなぁという思いはあったのですが、案の定、キックオフ、トライ、キックオフ、トライの連続で……大変悔しい思いをします。

時を同じにして、川崎支社の支社長をしていた牧野さんという方が、前に人事担当としていらして、たまたま正月の大学選手権をみていた。「いい面構えをしたやつらがいるじゃないか、どうしてうちはこういう奴らがとれないんだ?」と当時同じ部にいた小林さん(ラグビー部元部長)や僕に連絡がきたんです。そこから、力をいれた強化が始まります。

僕自身も高校生の勧誘のために、当時強豪だった熊谷や相模原、行田に出向いていきましたね。大学生に対しても、早稲田に至っては小林さんと合宿所まで出向いていって、会社説明会を行いました。この頃、柴田(部長2013年当時)、塩入、田中が入部してきた。ここから部が変わっていきます。(詳細は、ラグビーの歴史にも掲載)

もしラグビー部を作ってなかったら、会社生活は違ったと思いますか??

全然違ったでしょうね。
もし、やっていなかったら、まじめな経理マンをしていたと思います。

また、自分は労働組合に選ばれたことで、社内理解がうんと深まったところがあったと思うんですが、おそらく組合に選ばれたのは、自分がラグビーをしていたからなのだと思うんです。当時の書記長は今の東京ガス会長である鳥原さんだったんですが、「運動系ならば、仕事以外のことも面白がって取り組むんじゃないか?」と思っていただけていた気がします。

ラグビーをやっていたことで、若年のころから見つけられやすい環境があったということでしょうか?

そうかもしれませんね。
ただし、ラグビーをすることを、安易にプラス面だけ見るわけにはいきません。
ラグビーをやっているということは、部からたくさん学んでもいるけれど、たとえ平日夜間、土日といえども相当な量の会社の時間を犠牲にしているということでもある。そこを厳しく突かれることもあるだろうし、それを補うために、練習後、仕事に戻っている選手もたくさんいますよね。

俺らの時代には、まだ採用数も多くて人がいっぱいいたし、運動を通じて職場の一体感を盛り上げるという雰囲気もあって、社内大会のために事業所単位で練習をしたりしている頃もあったくらいで、悠長でした。ある時から人が減って厳しくなってきましたね。

例えば忙しい時期に、2人組で仕事をしていて、うち1人がラグビー部だとなれば、練習時間(定時)になると帰ってしまうわけです。それを相方に認めさせる働きをしないとならない。彼らはそれぞれ本当に頑張っていると思いますよ。尊敬しています。
一度くらいはラグビーに注力するべきか、それとも仕事をやるべきか悩んでしまう時期があるのも、よく分かります。僕なんかエラそうなこと言えないんです。やっている環境が全然違う。

次回、後編に続きます。

(インタビュア:高野美穂)

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